Column
2023.07.31

Delays fail to Quell Treg interest

※本記事はEvaluate社の許可のもと、イミュニティリサーチが翻訳したものです。内容および解釈については英語の原文を優先します。正確な内容については原文をお読みください。

AstraZeneca社のQuell社との8,500万ドルの提携は、Regeneron社とSonoma社の提携、Lilly社とTrex社との契約に遅れてなされました。

最近まで、遺伝子操作した制御性T細胞(Treg)によるアプローチは、ほぼ小規模バイオテクノロジー企業の領分でしたが、2023年の3件の取引では大手企業がこの領域に入り込みました。最新の契約、AstraZeneca社とQuell Therapeutics社の1型糖尿病と炎症性腸疾患に関する提携は今朝(2023年6月9日朝)明らかになったばかりです。

それでもTregの分野は必ずしも素早く動いたわけではありません。Quell社自体、元々2022年に実施する計画であった先導するプロジェクトであるQEL-001において、ファーストインヒューマン試験となる患者への投与をまだ開始していません。

Quell社の最高事業責任者であるLuke Henry氏がEvaluate Vantageに語ったところによると、この遅延は製造法の改善に起因しており、そのため「最終的なTreg細胞の品質に意味のある変化をもたらした」とのことです。その後、同社は投与を開始できるようになる前に、規制当局に「version 2.0」を通さなければなりませんでした。最初の患者はまだ治療を受けていませんが、すぐに始まることが予想され、最初の安全性データが今年中に得られることになっています。

いずれにしても、肝臓移植で評価されつつあるQEL-001は、AstraZeneca社との契約にカバーされていません。Henry氏が言うには、Quell社はQEL-001の資産そのものを自身で商業化できると推測していますが、他方、より患者数の多い疾患においては支援が必要かもしれないとのことです。「私共が追える一連の自己免疫疾患があります。しかし小さな会社である我々自身だけですべてを遂行することはできません。」

AstraZeneca社との契約には、「Quell社が望む場合」、後に米国において1型糖尿病のプログラムを共同で開発することを選ぶオプションが含まれています。

Henry氏は、AstraZeneca社と提携したプロジェクトがいつ臨床現場に届くかについて推測しようとせず、両社は「できるだけ早く進める」とだけ述べました。IBDの取り組みは現在少し遅れているとのことです。

Targeting

Tregは体内に自然に存在し、免疫抑制の役割を持ちます。そのため、自己免疫疾患や炎症性疾患の治療に用いられると期待されています。しかしこれまで手を加えていないTregでは達成できませんでした。

次世代のTreg療法では、バイオテクノロジー企業は細胞を遺伝子操作します。たとえば、Carのコンストラクトを加えて、対象の器官や部位にある特定の抗原にTregを誘導します。

QEL-001においては、Quell社はHLA-A2に特異的なCarコンストラクトを用い、マッチしていない移植レシピエントにおいて、HLA-A2陽性のドナー由来肝臓にTregを誘導できるようにデザインしました。

1型糖尿病とIBDについては、Quell社とAstraZeneca社はまだターゲットを明らかにしていません。

Henry氏が言うには、Quell社は、Carコンストラクトだけではなく、他のモジュールも加えて、疾患ごとに適合させた組み合わせのアプローチを取れるとのことです。そのようなモジュールの1つとしては、Car-Tで使われるものとは「似てなくもない」安全スイッチであり、もう1つは「表現型ロック」です。後者には、細胞を操作し、FoxP3を高発現させてTregの状態に保ち、病原性のあるエフェクタータイプのT細胞の表現型に変わらないようにするというものがあります。

Henry氏は表現型ロックについて、「私が思うには、AstraZeneca社のチームは、これを非常に差別化できるプラットフォームの1つと見たことでしょう。」と述べました。

一方でAstraZeneca社のバイオ医薬品研究開発責任者であるMene Pangalos氏は、電子メールで、Quell社の科学的アプローチについて、「どちらも先進的で高度に革新的」と表現しました。

Quell社は、持続性を改善する、または組織修復を促進できるものも含めた他のモジュールも開発しています。Henry氏は、後者の組織修復がIBDにおいて特に可能性があると見ています。

IBDにおける競合

腸疾患に対してTregを用いる取り組みを行っているのは、AstraZeneca社とQuell社だけではありません。(2023年6月の)数ヶ月前、Regeneron社は、潰瘍性大腸炎とクローン病をカバーする契約を、Sonoma社と結びました。

その頃、Regeneron社の免疫学・炎症担当の副社長であるMatt Sleeman氏は、Tregと炎症性腸疾患には強い関連があると指摘しましたが、Evaluate Vantageに対して「他の適応を排除するつもりではありません」と述べました。

同氏は、Regeneron社は「しばらく前から」Tregに関心をもっており、Sonoma社が「似た哲学」と「強い科学力」を持っていることがパートナー選択の要素であったと強調しました。

Merck社とAbbVie社が契約した分野である、IL-2を用いて内在性のTregを利用するという別の一般的なアプローチをRegeneron社はなぜ選ばなかったのか質問したところ、Sleema氏は次のように答えました。「IL-2は(Treg)全体の集団を増やします。標的組織内のTregにフォーカスする必要があると思います。」

AstraZeneca社とQuell社と同様に、Regeneron社の契約は、関節リウマチに対して開発中であるSonoma社の先導中のプロジェクトには影響しません。

Eli Lilly社は、今年(2023年)初めにTrex Bio社と契約してTreg領域に入りましたが、詳細はほとんど明らかにされていません。

最も先進的な遺伝子操作を施したTreg治療を行うのはSangamo社であり、腎臓移植に対するTX200を評価するSTEADFAST試験の第1/2相においてすでに3人の患者に投与しました。同社の最高科学責任者のJason Fontenot氏は2023年の4月にEvaluate Vantageに対して、進展は期待より遅く、それは新型コロナのパンデミックが原因であると述べました。

いずれにしても大手製薬会社が意向を示したことで、おそらく勢いが増すことでしょう。

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